ローグライクゲームを面白くするための3つの心得 3/3

第3回のこの記事では、
「達成できると期待させる」ためにできるいろいろな方法を紹介します。

第1回から読んでない方は、第1回から読むことをお勧めします。
ローグライクゲームを面白くするための3つの心得 目次

①たまに幸運が訪れる

「たまに、リスクリターンの状況が訪れる」「たまに、宝箱から強力な武器が出る」とかです。

つまり、
「運によるバラつき」のコントラスト

「(目に見えて分かる)プレイヤーの強化」(又は「進捗」)のコントラスト
をセットで使うということです。

また、これによって、いわゆる「射幸心」(運に期待して、苦労せずにクリアできると期待すること)で続させることもできます。

前述の通り、リスクリターンは、勝手にコントラストが生じるので、
「(目に見えて分かる)プレイヤーの強化」のコントラストとしては、リスクリターンにすることが多いでしょう。
(なので、「たまに、リスクリターンの機会が訪れる」という風になりがち。)

『Dead Cells』(2018)

②なぜ失敗したのかを分かりやすくする

なぜ失敗したのかが分かりやすいと、「次はそこを改善することでクリアできるはずだ!」と思ってもらいやすくなるでしょう。

失敗を分かりやすくするには、次のような方法が考えられます。

  • 失敗時に、長めのヒットストップをかける・スローにする
  • 失敗の原因を言葉で伝えてあげる
  • 難易度にコントラストをつける(=プレイヤーを殺しにかかるポイントを作る)

など

『Enter the Gungeon』(2016)

③進捗率を見せる

進捗率・進捗ゲージがあることで、ゴールまで到達するイメージができるようになります。
逆に、これがないと、「いつになったらゴールなの?」「このゲーム、本当に終わりがあるの?」となってしまうかもしれません。

また、ゲームオーバー時に進捗率を見せることで、自分の成長がより分かり、次回はもっと先まで進めるようになると期待させることに繋がるでしょう。

『Nuclear Throne』(2015)

④「死んでも引き継がれる要素」を作る

「死んでも引き継がれる要素」といっても、いろんなものがあるかとは思いますが、大きく分けると次の2種類です。

  1. 難易度が下がる要素
  2. ストーリーの進展・新しい展開・新しい機能の解放

※①と②が重複していることも少なくありません。

「①難易度が下がる要素」

例えば、Dead Cellsでは、道中で「セル」というアイテムが手に入ります。
パーマデスなので、死ぬと、上がったステータス、手に入れた武器はもちろん、「セル」も失ってしまいます。
しかし、特定の場所にいる収集者に「セル」を渡すことで、武器のアンロックやプレイヤーの能力の底上げなどができるのですが、それらは死んでも引き継がれます。

『Dead Cells』(2018)

これによって、いつかは達成できると期待させ続ける効果があります。
また、(クリアする気もなく雑にプレイしても、)「時間を無駄にした!」と感じにくくなります。

これらは非常にありがたい効果なのですが、この「①難易度が下がる要素」を好まない人もいます。
それは「①難易度が下がる要素」を入れることで、次のような性質がついてしまうためでしょう。

  • 最初に挑んで失敗したときと同じ難易度で再挑戦させてくれない
  • 自分のスキルの上達でクリアできたのか、難易度が下がったからクリアできたのかが曖昧

これらが許せる人と許せない人は分かれるでしょう。
なので、「①難易度が下がる要素」は一長一短だと言えます。

ローグライト

ちなみに、このような「死んでも引き継がれる要素」(特に「①難易度が下がる要素」)があるローグライクゲームは、ライトな(簡単な、易しい)ローグライクということからか、「ローグライト」と呼ばれることもあります。

「②新しい機能の解放・ストーリーの進展・新しい展開」

これは、クリアまでの難易度は変わらないけど、プレイを続けることで進展する別の何かがあるようにしておくというものです。
クリアとは別の動機で、遊び手にゲームを続けさせることに貢献します。

例えば、Nuclear Throneというゲームには、
プレイを続けることで、キャラクターがアンロックされていく要素があります。

『Nuclear Throne』(2015)

Eyesというキャラクターは、2-1まで到達することがアンロックの条件です。

キャラクターごとに使えるスキルが異なるので、これを「①難易度が下がる要素」と捉えることもできるかもしれません。
このように①と②が重複していることも少なくないでしょう。

参考動画

www.youtube.com

この動画では、「ローグライク」と「ローグライト」の違いや、それぞれの長所と短所などについて言及しています。
(日本語字幕あり)
参考になるかと思ったので、紹介してみました。

余談:錯覚の達成感

「ローグライト」のゲームに限らず、レベルの概念がある「RPG」などでもいえるのですが、
「錯覚の達成感」ってある気がするのです。

最初に挑んだ時は、レベルなどが足りずに失敗し、
レベルを上げることで、クリアできたとしましょう。
この時、(遊び手のスキルが一切上がっていなかったとしても、)まるで自分のスキルが上がったことでクリアできたと錯覚し、喜んでいる時ってあると思うんです。

で、(良くも悪くも)この錯覚ができるかどうかって、人によると思うんですよね。
「自分のスキルの上達でクリアできたのか、難易度が下がったからクリアできたのかが曖昧だから嫌だ!」と思う人もいれば、素直に「自分のスキルが上達してクリアできたぜ!」といって楽しめる人もいるでしょう。

(ちなみに、個人的には、どちらかといえば「ローグライク」の方が好きですが、引継ぎ要素が「わずかに難易度が下がるぐらい」なら、「ローグライト」も全然許容できるって感じです。)

自分のゲームではどのように「達成できると期待させるためのあれこれ」を適用したか

それでは、「Rebel -反逆のゴブリン-」という私が以前に作成したローグライクゲームで、これらをどこに適用したかについて簡単に紹介します。

①「強力な強化のコマンド」及び「キングゴブリンの出現」

コントラスト」の回でも紹介しましたが、
これらが、「たまに幸運が訪れる」に当たります。

これらが「きっと達成できる!」「まだワンチャンある!」「こんどこそはクリアできる!」といった期待に大きく貢献しているかと思います。

②ダメージを受けたときの長めのヒットストップ

これによって、失敗の原因が何だったかを気づきやすくなっているはずです。

③ゲームオーバー時に、進捗率を見せる

ゲームオーバー時に、進捗率を見せています。
(フロアが変わるたびに進捗率(or進捗ゲージ)を表示させた方がよかったかもしれませんが、これは手間がかかるという理由で実装を諦めました。)



「達成できると期待させる」については以上です。

軽くおさらい

もう一度、軽くおさらいしておきましょう。

3つの心得

  1. コントラスト」をつける
  2. 「リスクリターン」の機会を与える
  3. 「達成できると期待させる」ためのあれこれ

でした。

余談:ところで、基礎となるルール・メカニクスについては?

今回の記事では、ゲームの基礎となるメカニクスについては言及しておらず、いわばそのメカニクスを包んでいる外側の部分の話をしてきました。

基礎となるメカニクスには、Dead Cellsのような2Dのサイドビューアクション、Nuclear Throneのようなトップダウンシューター、風来のシレンのようなトップダウンでターン制など、様々です。
Slay the Spireのように、カードゲームとローグライクを組み合わせたようなゲームなんてのもあります。
また、武器の種類、インベントリの種類、プレイヤーができるアクションなど、いろんな箇所でオリジナリティが出せるかと思います。

しかし、ローグライクの外側の部分に関しては、この記事で紹介した3つの心得は常に適用されるべきだと思ってます。
私の知る限り、よくできたローグライクゲームのほとんどは、この3つの心得が守らています。

もちろん、その適用の仕方でオリジナリティを出すことはできるかと思います。
例えば、同じリスクリターンでも、「道中に任意で挑める強敵がいて、倒すと多くの報酬を落とす」などのよくありがちな方法から、Dead Cellsのような「呪われた宝箱」のような斬新な方法など、いろんな適用の手段が考えられるでしょう。

最後に

本文は以上です。

上手く伝わる内容になっているかどうかは不安ですが、とりあえず投稿してみました。
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